仕事上のケガや病気の際は
労災保険を使う
業務中だけでなく、通勤時のケガも労災
「労働者災害補償保険」は一般に「労災保険」と呼ばれ、仕事中(もしくは仕事や職場環境が原因)や通勤途中で起きた、労働者の負傷・病気・障害又は死亡に対して、労働者やその遺族のために必要な保険給付を行う制度です。仕事中起きたものを業務災害、通勤途中で起きたものを通勤災害と呼んで区別しています。
労災保険には、「療養(補償)給付」「休業補償給付」「障害補償給付」「葬祭料」などさまざまな給付があります。
「療養(補償)給付」は、無料(通勤災害は初診時に200円負担)で、治癒するまで必要な治療を受けられる制度。給付が行われるのは、労災指定病院と都道府県労働局長指定の病院です。これ以外の医療機関では治療費を自己負担後、労働基準監督署に治療費を請求することになります。
「休業補償給付」では、休業4日目から給付基礎日額(直近3カ月の賃金日額)の80%が給付されます。休業3日目までは使用者が休業補償として平均賃金の60%を支払う義務があります(ただし、通勤災害は適用されません)。
一定の障害が残った場合は「障害補償給付」(通勤災害は、障害給付)が支給されます。給付の内容は、障害等級によって異なります。
労働基準法第19条で、労災休業期間中および、休業期間終了後30日間は基本的には解雇できないことになっています。
労働基準法第19条
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によって打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない。
労災保険に未加入の事業所で働いていても労災給付は受けられます
労災保険は、農水産業のうち5人未満の個人経営の事業を除いて全事業所(株式会社など法人はもちろん、個人経営も含まれます)が加入しなければならない強制保険です。派遣、パートといった雇用形態に関係なく労働者全員が適用対象になります。しかし、完全歩合制の営業員など、契約上は業務請負となっていると労働者とはみなされませんので注意してください。
労働基準法第9条では、労働者とは「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と定義されています。
勤務する事業所が労災保険に加入していないという場合があります。労災保険は全事業所加入の強制保険ですから、未加入の場合でも労災にあった労働者には保険が適用されます。また、労災保険には加入しているが、労災になることを嫌がって労災保険の申請を嫌がる事業所もあります。労災保険は被災者、家族、同僚でも申請できますので、いずれの場合も労働基準監督署に相談してください。
増えている、うつ病などでの労災申請
近年、うつ病など精神障害等による労災申請が増加しています。平成17年は656件であった申請が平成19年には927件に増加しています。従前、超過労働(残業、休日出勤など)、社内のいじめなどを原因とするうつ病などでの労災認定には、仕事の量や質、責任、職場の人的・物的環境などと発病との関係を、労災申請を行う労働者が証明しなければなりませんでした。しかし平成14(2002)年にできた「職場における心理的負荷評価表」によって客観的に判断できるようになりました、さらに平成21(2009)年には、「違法行為を強要された」などの新たな評価項目も追加されました。また、超過労働時間と労災認定との関係も基準が示されています。
超過労働時間と労災認定との因果関係の強さの基準は次の通りです。
発病直前の1ヵ月の時間外労働が100時間以上⇒因果関係がある
発病直前の2~6ヵ月の時間外労働が平均80時間以上⇒因果関係がある
発病直前の1ヵ月の時間外労働が45時間~80時間⇒因果関係がある可能性が高い
発病直前の1ヵ月の時間外労働が45時間未満⇒因果関係はない