労働条件などのトラブルを防ぐ
「労働契約法」について
近年、就業形態が多様化し、社員と会社との間で労働条件などに関するトラブルが増えています。このため、労働契約についての基本的なルールを明らかにすることを目的として、労働契約法が定められました。
1.雇用契約を結ぶとき
(1)契約内容の書面確認(労働契約法第4条第2項)
入社時はもちろん、契約期間や賃金などの雇用契約の内容が変わるときは、労働条件を書面で確認することが大切です。
(2)有期雇用契約締結時の明示事項(平成15年厚生労働省告示第357号)
有期雇用契約で働く場合、契約期間満了時に突然雇止めを通知されるなどのトラブルが増えています。このため、入社する際に雇用契約書などで「雇用契約は更新される場合があるのか」「更新されるのであれば、どのような基準を満たせば更新されるのか(例えば、勤務成績や能力、期間満了時点での会社の業務量や経営状況など)」について、必ず確認しておきましょう。
こんなケースありませんか?
入社時に契約内容を確認したけど、何も教えてもらえない。
(3)労働条件の決定(労働契約法第7条)
労働条件を詳細に定めていない場合、その労働者に適用される就業規則において「合理的な労働条件が定められており」、「労働者に周知されている」場合は、就業規則で定める労働条件が雇用契約の内容となります。入社の際は、就業規則の内容をよく確認しましょう。
(4)就業規則違反の雇用契約(労働契約法第12条)
就業規則は労働条件を統一的に設定するものですが、社員が会社と合意していれば、個別に労働条件を決定することもできます(例:特定の社員について、規定以上の手当とする場合など)。ただし、労使が合意しても、就業規則の基準を下回る労働条件とすることはできません。
こんなケースありませんか?
正社員は1日8時間勤務という契約で入社したが、就業規則を確認したところ、労働時間は1日7時間となっている。
2.雇用契約(労働条件)が変更になるとき
■原則(労働契約法第9条)
■例外(労働契約法第10条)
原則として、会社からの一方的な就業規則の変更によって、社員全体の労働条件が不利益に変更されることは認められていません。ただし、就業規則の変更が総合的に判断して合理的である場合には、就業規則の変更が認められ、変更後の就業規則の内容が新たな労働条件となります。この場合、社員全員の同意は必要ありませんが、社員に対する十分な説明は必要になります。
こんなケースありませんか?
会社が就業規則に定めた終業時刻を繰り下げ、労働時間が増えたにもかかわらず、給与額は据え置かれたままとなっている。それについて、会社から全く説明がない。
3.雇用契約が終了するとき
(1)解雇権の濫用(労働契約法第16条)
解雇とは、会社側の一方的な意思表示により雇用契約を終了させることをいいます。
解雇は「客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当である」ケースでなければ、無効となります。会社から突然解雇通知を受けたとしても、まずはその解雇の理由が合理的であるか、解雇が不当解雇に当たらないかを確認する必要があります。
こんなケースありませんか?
業績が悪化したから本日付けで解雇にする、明日から来なくていいといわれた。
こんなケースありませんか?
営業成績が上がらないから、解雇するといわれた。
①会社が社員の能力向上のため、教育・指導を行った実績があるか
②解雇の理由について合理的な説明があるか
などのプロセスが重要とされています。このようなプロセスがなく解雇をされる場合は、会社と話し合うか、最寄りの労働基準監督署に相談してみましょう(「(3)解雇・雇止めなどに関する相談先」を参照)。
なお、営業職などで、一定の能力や経験を見込まれて採用された社員の場合、契約内容(特に給与額が高いなど)にもよりますが、期待された能力・成果を発揮しなければ、新卒者などに比べて解雇が認められやすい傾向にあります。
(2)「雇止め法理」の法定化(労働契約法第19条)
雇止めとは、有期労働契約において、会社側(使用者)が更新を拒否し、契約期間の満了をもって労働者を退職させることをいいます。雇止めについては、下記の条件に該当する場合、その雇止めは無効となり、契約が更新されたものと見なされてそれまでと同一の労働条件で契約が続くことになります。
要件)
- 契約が過去に何回も反復更新されて、期限の定めのない労働契約と同一視できるような実態である場合
- 業務内容が恒常的であり、更新手続きが形骸化している
- 雇用継続を期待させる使用者の言動がある
- 同様の地位の労働者について、過去に雇止め事例がほとんどない
- 労働者が契約の更新を期待するのがもっともであり合理的だと考えられる事情がある場合
- 同様の地位の労働者について、過去に雇止め事例はあるが、業務内容が恒常的であり、更新回数が多い
-
Case)
-
Case)
但し、上記要件に該当しても対象となるには労働者からの有期労働契約の更新の申込みが必要です(契約期間満了後でも遅滞なく申込みをすればルールの対象となります)。
つまり、契約満了後も就労を継続する意思があることを会社側にはっきり表明しておくことが重要です。
こんなケースありませんか?
1年の有期契約で、契約社員として勤務している。仕事内容はほぼ正社員と変わらず、過去3回更新しており、その際は契約期間について何も触れられなかった。ところが今回4回目の更新1ヵ月前にいきなり、「次の更新はありません」と言われた。
納得がいかない場合は、「雇止めは受け入れられない」という意思を明確に伝えたうえで、会社に話し合いの場を設けるよう伝えましょう。
(3)雇止めの予告(平成15年厚生労働省告示第357号)
①有期労働契約を3回以上更新している
②1年以下の契約期間の有期労働契約が更新または反復更新され、最初に有期労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
③1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合
※雇用契約を結んだ時に、あらかじめ次回は更新しないと明示されている場合は対象となりません。
一定期間雇用したにもかかわらず、会社が期間満了をもって雇用契約を終了させることを、「雇止め」といいます。雇用契約が上記の①~③に該当する場合で雇い止めをするときは、会社は契約終了の30日前までに社員に予告をしなければなりません。
こんなケースありませんか?
2ヵ月間の雇用契約を3回更新してきたが、4回目の契約期間満了日に、突然退職を通知された。
このような場合、予告がなかったことも契約の再更新を求めて会社側とよく話し合って下さい。
なお、会社側と話し合っても解決しない場合については、最寄りの労動基準監督又は総合労働相談コーナーに相談してみましょう。
(4)解雇・雇止めなどに関する相談先
相談機関 | HPアドレス |
---|---|
労働基準監督署 | http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/location.html |
総合労働相談コーナー | http://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html |
4.有期雇用から無期雇用契約へ
(1)無期労働契約への転換(労働契約法第18条)
同一の使用者との間で、パート・アルバイト・契約社員などの有期労働契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換します。
このルールは、有期労働契約の濫用的な利用を抑制することで、労働者が安定的に働き続けられることを目的としています。
※ 通算契約期間のカウントは、平成25年4月1日以後に開始する有期労働契約が対象です。
平成25年3月31日以前に開始した有期労働契約は、通算契約期間に含めません。
※このルールは無期転換申込権の発生後、有期契約労働者が会社に対して無期転換の申込みをした場合、に有効となります。申込みは口頭でも法律上有効ですが、書面により意思表示を行って記録を残しておく方が、後々のトラブル防止につながります。(書面のフォーマットは「無期転換ポータルサイト」参考様式をご参照下さい)
(2)無期転換ポータルサイト(http://muki.mhlw.go.jp/)
http://muki.mhlw.go.jp/