雇用契約

アルバイトであっても労働者であることに変わりはなく、労働基準法などのルールが適用されます。ところが、アルバイト雇用に対する会社の対応がずさんであることも多く、後で賃金や勤務時間などをめぐって労使トラブルに発展するケースが増えています。子どもがアルバイトをはじめることになったら、後々このようなトラブルにならないよう、勤務先ときちんと雇用契約を結んでいるかどうかを、保護者も必ず確認してください。

雇用契約の成立

雇用契約は、社員と会社で合意すれば、口頭でも成立します。

口約束であっても「明日からうちで働かないか?」「はい、わかりました。」というやり取りがあれば、雇用契約は成立しているといえます。
ただし、口頭だけのやり取りでは、後で「いった、いわない」といったトラブルが起こりやすいので、契約は書面で確認しておく方が望ましいでしょう。

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労働条件の明示

(1)すべての社員(アルバイトも含めて)に明示しなければならない労働条件
  (労働基準法第15条、施行規則第5条第2項)

賃金や労働時間、休日などの重要な労働条件(※)は、書面による明示が会社に義務づけられています。
※「労働条件チェック表」の労働基準法の欄を参照

労働条件のうち、特に重要な部分については書面の交付が義務づけられています。一般には「雇用契約書」や「労働条件通知書」、「就業規則」といった書類により会社から明示されますが、明示されない場合は会社に請求しましょう。

(2)パートタイマーやアルバイトに明示しなければならない労働条件
  (パートタイム労働法第6条、平成15年厚生労働省告示第357号)

①「昇給」、「退職金」、「賞与」の有無について、書面による明示が会社に義務づけられています。
②「更新の有無」、更新ありの場合は「更新の判断についての基準」について、書面による明示が会社に義務づけられています。

パートタイマーやアルバイトで、勤務時間が就業先の正社員と比べて短い場合は、(1)の他にパートタイム労働法で定められた事項(上記①の内容)についても書面の交付が義務づけられています。また、契約期間が有期の場合は、「契約期間の更新の有無」「(契約更新がある場合は)その判断基準」(上記②の内容)についても書面の交付が義務づけられています。

(3)労働条件チェック表

パートタイマーやアルバイトで働くための労働条件は、必ず雇用契約書や労働条件通知書といった書面で確認しなければなりません。ただし、会社が通知する書類に、必要な事項が記載されていないことも多いため、下記のチェック表を参考のうえ、記載漏れや不明点がある場合はただちに会社に確認しましょう。
【チェック表】⇒労働条件(絶対明示事項)(⑥以外はすべて書面で明示)

※労働条件チェック表

チェックする事項 チェックのしかた
労働基準法 雇用契約の期間 いつから、いつまで働くのか 「長期」「短期」といったあいまいな表現になっていませんか?
就業の場所・
従事する業務の内容
どこで、どのような仕事をするのか 事前の説明と違っていたりしませんか?
始業・終業の時刻、 何時から何時まで働くのか 勤務時間や勤務日数が決められていますか?シフト制の場合は、シフトの決め方も確認しましょう。
残業(早出を含む)の有無、 残業はあるのか 学校など他の予定に支障をきたさないよう、あらかじめ確認しておきましょう。
休憩時間、休日、休暇など 休憩や休日、有給休暇はとれるのか 休憩時間や休日は労働基準法の基準を満たしていますか?有給休暇は一定基準を満たせば、アルバイトであっても取得する権利があります。
賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切・支払の時期に関する事項 給料をいつ、いくらもらえるのか もっともトラブルになりやすい事項ですので、基本給だけでなく交通費などの手当も確認してください。
退職に関する事項
(解雇の事由を含む)
どのような時に退職となるのか
やめる時の義務は何があるか
退職となる条件や、退職する場合の手続などについて確認して下さい。
昇給に関する事項
※書面でなくてもよい
どのように昇給するのか 書面に記載がない場合、口頭で説明を求めてもかまいません。
パートタイム労働 昇給の有無 昇給するのか 契約期間中に給料が上がることがあるのか確認してください。
退職手当の有無 退職金が支給されるのか 退職時に退職金が支給されるのか確認してください。
賞与の有無 賞与が支給されるのか 賞与が支給されるのか確認して下さい。
有期雇用契約に関する基準 更新の有無 期間が満了しても更新されるのか 契約期間満了と同時に契約終了となるのか、または更新される場合があるのかを確認してください。
更新ありの場合は
「更新の判断の基準」
どのようなときに契約が更新されるのか

上記⑩が「あり」の場合は、更新時の判断基準を確認してください。

例:
 ●勤務成績・勤務態度
 ●期間満了時の会社の業績
 ●仕事量 など

身元保証人の意味とは

多くの会社では、社員を採用する際に「身元保証書(身元保証書)」を提出させており、一般的には、社員の両親や親族が身元保証人となることが多いようです。
身元保証人と聞くと「金銭を借り入れるときの連帯保証人」というイメージを思い浮かべるかもしれません。しかし、身元保証人は「身元保証に関する法律」という法律により定められたもので、通常の連帯保証人とは大きく異なります。身元保証に関する法律では、次のとおり規定されています。

◎身元保証期間
保証期間は、身元保証書等で定めた期間(最長5年間)です。期間の定めがない場合は自動的に3年間となります。

◎保証範囲
身元保証人が100%損害賠償しなければならないとは限りません。身元保証人の責任範囲や賠償額は、次の①~③を総合的に勘案のうえ、裁判所において決定されます。

①社員の監督に関する会社側の過失の有無
②身元保証人が身元保証を引き受けた事由及び引き受けたときに行った注意の程度
③社員が担当する業務の変化その他一切の事情

つまり、「会社の不注意により社員の不祥事を見抜けなかった」「親族・親戚関係のため、断れなかった」などの事情があれば、賠償額が軽減される可能性があります。

◎会社の通知義務と身元保証人の契約解除権
会社は、次の①または②に該当した時は、そのことを身元保証人に通知する義務を負います。(この通知をしていないと、身元保証人に対して損害賠償請求することができません。)
また、身元保証人は、会社からの通知の有無を問わず、次の①または②に該当したことを知った時は、いつでも将来に向かって身元保証契約を解除できます。

①労働者に業務上の不適任や不誠実な行為があり、身元保証人の責任が生じるおそれがあることを知った場合
②労働者の職務・勤務地の変更により、身元保証人の責任が以前より重くなる場合または労働者に対する監督が困難になる場合

◎身元保証人に関する相談先

相談機関 HPアドレス
法テラス 国が設立した公的な法人で、法的トラブル解決のため、電話による弁護士の無料相談なども受けられます。
http://www.houterasu.or.jp/

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