現場コラム【訪問介護の仕事から】 -5-
一人の業務
訪問介護の仕事は大きく「生活援助」と「身体介護」の二つに分けられることを以前このコラムで紹介しましたが、さらに大きな特徴としてあるのは、ヘルパー「一人で」業務をこなすことです。施設ならば、ヘルパー二人で一人の利用者を介助したり、ヘルパー同士助け合って業務をこなすことも多いのですが、訪問介護の仕事は、先輩、同僚ヘルパーの助けが借りられないのです。そこで、今回は「一人で」という観点から、話を進めていきます。
「一人」ということは、自分が最後まで業務を行わなければ利用者は困り、ヘルパー失格となりかねません。例えば「生活援助」の料理、洗濯、掃除などを行う場合でお話します。それらの作業を、遂行していくのは自分「一人」なのです。だから、それぞれの基本、例えば料理だったら、包丁を使う、お米を研ぐ、炊飯器の扱い方、煮炊きすることなど。洗濯なら、汚れものの仕分け、洗濯機の扱い方、干し方、たたみ方。掃除なら、掃除機の使い方やトイレや風呂の洗い方などをわかっていないと、効率よく仕事ができません。それに、それぞれのお宅で、少しずつやり方が違います。
また、「身体介護」なら、入浴・トイレの介助の方法、ベッドから車椅子への移乗等の方法・技術を学んでおく必要があります。これも、それぞれの住宅事情や利用者の介助の程度によって少しずつ異なるので、業務の回数を重ね経験を積むことで習得していきましょう。くれぐれも自分の介助のミスで、利用者さんが転倒したり、ケガをさせてしまうことがないようにしなければなりません。
「生活介護」の中で、ケガなどには細心の注意は払いますが、利用者の出来ることをやってもらうことは、利用者自身の体の使える機能を保持・活用していくために、とても大事なことです。さらにヘルパーの心構えとして、家事が好きだった利用者なら、野菜の切り方を聞いたり、洗濯のたたみ方を教えてもらったり、好きだった事をヘルパーが一緒に行い、相談しながら進めるのも、利用者のやりがいにつながる大切なことです。
また、ヘルパーには“見守り”ながらという重要な姿勢があります。「身体介護」なら、衣服の着脱や立位などの体勢の取り方など、利用者が行えることをむやみにヘルパーが手出ししてしまうことは、利用者の自立を損なうことになります。利用者には、できることを積極的にしてもらい、ヘルパーの仕事を伝ってもらいましょう。そこから、利用者とのコミュニケーションが生れます。
そして何より、ヘルパーは自分の健康を守ることが大切です。利用者に病気をうつすのもNGですが、逆のこともありえるのです。例えば、利用者の体調不良による吐瀉物を片づけなければならないこともあります。その際は、万が一の自分への感染を防ぐためにも、使い捨てエプロンや手袋を用意しておくことや、消毒液を使用した処理の方法も知っておく必要があります。
思いもかけなかったことで、体調を崩すこともあります。
私は、利用者宅まで往復2時間の自転車通勤で、長時間の乾いた風とまぶしい太陽のためか?ドライアイになってしまいました。利用者のお宅で、包丁を使っていたときに目が痛んで、ヒヤヒヤしながら調理したことがあります。今から思えば、ゴーグルのようなサングラスや深くかぶる帽子などの用意を怠ったからと反省しています。
自分「一人」で業務をする上で、家事にしろ、身体介助にしろ、技術や方法を知っていた方が、自分を守ることになります。しかし、それは難しいことではありません。今まで家事をやっていた方なら十分対応できることだし、炊事、洗濯をしたことのないあなたでも、自分でやってみれば案外やれることに気づくのではないでしょうか。
介助の方法は、人の動作の基本(ムダのない力の入れ方やスムーズな動き)を考えた方法であり、回数を重ねることで誰でもできるようになります。
やりながら発見することも多く、自分のペースをつかめれば、長続きできる仕事だと思っています。
(訪問介護編 おわり)