現場コラム【新人、介護の仕事奮闘中】 -7-
クリスマス、お正月は悲喜こもごもの大イベント。

12月は施設に入居している高齢者にとって一年の内、もっとも気がそぞろになる時期です。クリスマスイブはプロローグです。施設では10日頃からクリスマスデコレーションやイルミネーションを飾り付け、毎日クリスマスソングを流し館内の雰囲気を盛り上げて行きます。これは季節感を強調するための療法のひとつです。
家族や孫が面会に来てくれれば先ず一安心です。短い時間ですが、一緒に外出して近所のファミリーレストランや回転すし店でお食事をして夕方くらいまでに戻って来ます。普段難しい顔ばかりされている方も、帰館されると顔が穏やかになっていたりします。ささやかですが家族と過ごす時間がやはり嬉しいのです。家族が来なかった利用者の方にも楽しんで頂ける様に、24日はレクリエーションの時間にクリスマスパーティーが催されて、甘いお菓子やプレゼントが贈られます。
メインイベントは大晦日から元旦にかけて(正月三が日を含む)です。24日が過ぎると直ちに飾り付けをお正月バージョンに一晩で取り替えます。もちろん日中流す音楽もお正月用に変更します。施設が新しいのでここに入所している方は、初めて施設で迎える新年となります。殆どの方は昨年家族と一緒に過ごしていたはずです。皆さん心の中では、自宅や、息子さんや娘さんの家で何泊か外泊出来ると思っていた様ですが、実際は8名の方が一時帰宅されたのみで大多数の方は施設で過ごすことになりました。施設では、年末年始の雰囲気が味わえる様に大晦日はお蕎麦、お正月は高齢者向けに加工されたおせち料理やお雑煮などが正月三日まで出されます。レクリエーションもカルタ(百人一首や犬棒カルタ)やトランプ、福笑いなどお正月を演出する遊びが連日行われます。参加される皆さんは笑ってはいるものの、どこかさみしそうです。
クリスマスもお正月も、誰も面会に来なかった入居者の数名がこの後、機嫌が悪くなってしまって大変でした。元旦の日は丁度夜勤当番だったのですが、夜11時頃女性の入居者がヘルパーステーションを訪れ「私は捨てられたんだ~、○○(息子さん)は奥さんが大切だもの」と家族の愚痴を2時間くらい聞かされました。仕舞いには「あんただって同じだ!」と泣き出す始末でとんだとばっちりです。別の入居者は夜中の2時頃、館内の公衆電話で「あんたの住んでいる家は私の物だから今すぐ出て行け」と娘さんに何度も電話を掛けて悪態をついていました。電話の元を抜いて「夜遅いから・・・」とさとすと「ふん、あんたもグルね!」と館内を「死んでやる、さあ殺せ」と大声出して歩きまわります、抑えるのに苦労しました。また別の方は、入浴の最中急に職員を怖い顔でにらんで「何で神社に置いてきぼりにした!」(実際には何処にも行っていません、妄想です)とその場で脱糞を始めてしまってびっくりしました。他の職員にも聞きましたが、昼間は何もなかった様に普通にしているのですが、夜になると同じ方が不穏な行動をする様になっているとの事でした。ベテランの先輩ヘルパーは「しばらくすると落ちつくから」とさらっと言います。日頃はまだらな認知症で比較的穏やかな生活をしていますが、お盆やお正月といった帰省シーズンの感じは覚えていて、いつもと様子が違うと動揺してしまう様です。

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