現場コラム【新人、介護の仕事奮闘中】 -17-
東日本大震災被災地視察1「石巻・女川・松島・仙台の道路事情・・・」
福祉有償運送講習を受講したNPO法人は、市内の社会福祉協議会とも連携があり、災害ボランティア活動も積極的に行っています。事務局スタッフと親しく成る中で、「今度、被災地の視察を行うが一緒に行ってみないか」との誘いがあり、なかなか経験出来る事ではないと思い同行させて頂く事にしました。現在勤務している介護施設には事情を説明し許可を得、勤務シフトの変更と公休・有給休暇を組み合わせて日程を調整してもらいました。視察に要する費用は、移動途中や現地に入っての飲食は自己負担ですが、高速道路料金やガソリン代は市の許可証を持っているので基本的に全て無料です。現地での宿泊費用も負担はありませんでした。大きな費用負担もなく視察に参加出来ました。
事務局側では既に3回程斥候隊を現地(石巻・女川・仙台)に送り込んでいます。今回はNPO法人の理事長を団長とする総勢12名の視察チームとなります。メンバーは事務局スタッフと社協社員、それにボランティア希望者数名で構成されています。おまけの私は運転手役でくっついて行きます。案内役は斥候隊の長で現地情報を細かく把握しています。この方は阪神淡路大震災の時にも活動した手練れのドライバーです。
日程は6月8日(水曜日)~12日(日曜日)までの5日間。視察の目的は、現地の被災状況確認・道路事情把握・現地社協及びボランティアセンター担当者とのリレーション・観光協会への車いす寄贈・通学支援の事前準備やその他交通弱者の現状把握などです。
勤務終了後ターミナル駅に集合して車に分乗、運転を交代しながら約10時間かけて石巻まで移動しました。初日は移動しながらの車中泊です。二泊目・三泊目は松島のホテルに宿泊し四泊目はまた移動の車中泊で戻って来ました。帰宅したのは夜中という強行スケジュールでした。視察コースは、石巻市内・女川町内・松島観光協会周辺・仙台市若林区を順に廻りました。現地状況は悲惨なもので、まったく絶望的な惨状が広がっていました。映像はテレビや新聞・雑誌で伝えられている通りですが、現場を見るとその広範囲の荒廃に愕然とします。加えてものすごい臭いがいたるところで漂っています。糞尿と、魚介類や海藻の腐敗した臭いが混ぜこぜになった臭いです。
火災があった地域は、煙硝の臭いが加わるので更に異臭となります。また風が吹くと乾燥したヘドロが巻き上げられるため、細かな粉じんで息苦しくなります。無駄だと分かっていてもマスクをしてしまいます。この様な臭いや粉じんの状況は、映像や写真では感じられません、現地に入ってはじめて気付かされます。主要な幹線道路はある程度片付けが済んでいますが、脇道や田畑などは瓦礫と、放置された車や家屋が逆さまになって転がっていて、3ヶ月経過してもまだ整理が進んでいない状況がうかがえます。加えて、電気が届いていない地域が多いため、信号機も殆ど消えています。そもそも交差点に信号機の土台は残っていますが、信号機そのものが流されてなくなっています。辻々に警官が立って手信号で交通誘導を行っています。海沿いの道路は数メートル単位で地盤沈下が起き、満潮時には冠水してしまいます。使用出来る道路に限りがあり、慢性的な交通渋滞がいたるところで起きています。舗装された道路は、ゆっくりとした速度で走行が可能ですが、陥没や亀裂が各所にあるため注意が必要です。また瓦礫のくぎやネジ、ガラスの破片などが散乱しているので頻繁にパンクします。パンク修理剤やスペアタイヤの予備は欠かせません。
視察の目的の一つに現地の道路状況確認があります。これは視察を主催したNPO法人が主に交通弱者に対する支援を主な活動としているためです。被災地の道路事情の把握は非常に重要な課題となります。移動支援のボランティア希望者は、元自衛官やタクシー運転手の方で車両操作には長けています。使用する車両は基本的にNPO法人が準備した福祉車両ですが、状況によっては個人所有の車両を使用する場合もあります。車両やドライバーの準備が出来ても、地元自治体も情報収集にまったく手が回らない様で、被災後の道路地図が存在していない状況です。津波で建物が殆ど流されてしまっているので、既存の地図がまったくといってよい程役に立ちません。ナビゲーションが付いている車は画面から走行位置の把握が出来る程度です。道路が寸断されている場所も多数あるので目視で確認し記録する事が重要です。また潮の満ち引きで道路が消えてしまう事もあります、朝晩で使える道の存在を確認し、手持ちの地図に書き込みをしながら道路事情を把握して廻ります。非常に地道で根気のいる作業です。
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