現場コラム【新人、介護の仕事奮闘中】 -17-
東日本大震災被災地視察3「さまざまな交通弱者と支援活動」

 今回の視察では直接支援活動も行いました。女川町体育館で避難生活をする小学生とその家族を市内の大型ショッピングセンターに送迎、生活用品のショッピングツアーを実施しました。衣料用品(下着類が多かった様です)をメインに、靴など子供達の身体に合ったサイズを購入、プレゼントしました。お母さん方には衣類の他に、生理用品や赤ちゃん用紙おむつなども提供しました。また希望者を募り、津波被害の無かった山間部に有る温泉施設への日帰り入浴ツアーも実施しました。久しぶりにゆっくり入浴出来た、と参加した皆さん大変喜んで頂きました。ここの避難所には自衛隊が設置する公衆浴場が有りますが、ゆっくり入浴というより最低限の“保清”の意味合いが強く、リラックスして入浴を楽しむことができません。支援に要する費用は社会福祉協議会に寄せられた寄付を使用しました。

 寄付の際に寄せられた意見として、「赤十字などの義捐金では、何処に届くか分からないので直接被災者の役に立つ支援に使用して欲しい。」との要望が多数あり、今回は子ども達を中心に不足している衣料用品や、生活物資の調達に充てることにした様です。また、近々自衛隊の公衆浴場も撤収されてしまうとのことで、入浴ツアーは定期的な開催を計画しているとNPO法人の理事長は話していました。

 避難所で暮らす学童・生徒のため、学校と避難所の間を結ぶバスの運行(朝・夕のみ)は少しずつ整備さてれきましたが、高齢者や病人などの通院、買い物の移動手段はまだまだ未整備の状況です。人工透析を必要とする患者さん達は、タクシーなどに同乗して市内の総合病院に通院しています。タクシーの台数も少ないため、通院日に予約をするのも一苦労です。まさしく命がけで移動手段を日々模索しています。

 石巻市内の支援学校(養護学校)も訪問しました。「通学出来ない生徒が多数いるが、スクールバスも流されて送迎が出来ない。路線バスもまだ利用出来る状況では無く非常に困っている。避難所生活が長引き子ども達の精神状態が不安定になっている。」と校長先生が話していました。障がい者・高齢者・病人といった交通弱者への援護の手が、なかなか行き届いていない現状を目のあたりにしました。

 車いすを3台、松島観光協会に寄贈しました。津波で観光船に乗る際貸出す車いすが流されて困っている、との情報を入手していたため寄贈することになったそうです。寄贈は地元新聞にも取り上げられ小さな記事ですが紹介されました。松島も津波の被害を受けましたが、景勝地に立つ“五大堂”は被害が極めて少なかったそうです。近代建築の建物は壊れてしまったのに何百年も前に建てられた寺は流されませんでした。「先人達の知恵はたいしたものです」と話されていた観光協会の専務理事さんのことばが印象的でした。

 最終日に、石巻から仙台に引越しをするご家族のお手伝いをしました。引越しと言っても段ボール箱5個程です。家族4人で避難所生活をしているそうですが、ご主人の会社も、自分たちの家も全て流され、仮設住宅への入居もままならず、義捐金の支給も当てにならない状況で生活再建の計画も立てられないので、仙台で仕事をしながら今後を考える、とのことでした。「幸いにも、私たちは子どももみんな無事でした、ひろった命だと思ってこれからを生きて行きます。」と話していました。仙台のアパートまで送り届けた後、家族みんなで我々を見送ってくれました。こちらが恐縮してしまいました。

 復興が進む中、交通弱者に対する対応が置き去りにされてしまっている現実に、残念な気持ちになります。交通弱者への直接支援にも限界が有ります。今後は、福祉有償運送のスキームを被災地に根付かせるための各種講習や指導を行ないたい、と今回この支援ツアーを主催したNPO法人の理事長は話していました。

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